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時の散策放送100回記念 「作家 岸宏子の仕事」放送!
投稿日:2022年05月26日

#スタッフブログ

中畑 亜香里
投稿者:中畑

時の散策放送100回記念 「作家 岸宏子の仕事」放送!
投稿日:2022年05月26日

#スタッフブログ

投稿者:中畑

中畑 亜香里

恥ずかしながら文学に疎く、伊賀市で育ったにも関わらず、「岸宏子」という名前を聞いたのはICTに入社してからのことです。
そして、そのお名前は伺いつつ結局作品に触れたのは入社も7年目、今回、時の散策の撮影が決まってからでした。

弊社の本棚に並ぶ地域誌伊賀百筆の中の一冊に岸さんが20歳の時に書いた「醜女」が掲載されていました。
菊池寛や岸田國士が選考委員を務めた第一回勤労文化賞を受賞した作品です。

戦中の農村を舞台に、傷痍軍人になった青年が主人公。心中未遂の過去を持つ、決して美しいとは言えない容姿の娘が過去の行いから自分を戒めて禁欲的に生きる姿を見て、青年は背中を押され再出発を図るという物語です。

暗い過去を持ちながらも、自身の生きる環境に献身的に尽くす娘からは、後ろ暗さは感じられず、前を向いて、どこか光に向かって進むような力強さを受けました。青々とした山や透き通った清流といった農村の景色が思い浮かび、登場人物の心の動きが、説明がなくとも伝わってくるようです。

明るく快活な文章が心地よく、気づけば夢中で読み進めていました。
これを20歳の女性が…?今の私より10歳近く年下の女性が書いたものとは到底思えませんでした。

きっと、作者である岸さんも、作品の様に「竹を割ったような」性格だったんじゃないだろうかと考えながら、今度は生前の姿を求めて、弊社で保管する過去の取材のアーカイブ映像を探しました。1995年に叙勲を受けた際のインタビューや上野高校に原稿やドラマの台本を寄贈した時の姿が出てきました。

叙勲後のインタビューでは「喜びよりも当惑しているんです。それだけの価値も力も無いしね」と謙遜しながら「収入があるのに勲章までいただくのはなんだか図々しい感じがする」と、なんともはっきりした言葉で気持ちを語っていらっしゃいました。
なるほど、これが岸宏子節か、なんて。社会で揉まれながらも活躍した女性の先輩として、このような人が伊賀市に居たのかと誇りに思うとともに、勇気を分けてもらったように思います。

今回、番組では岸さんの親戚や、岸さんが開催していた読書会の参加者など岸さんを間近で見てきた方々にもお話を聞いています。中畑の朗読もあります…入交家住宅の雰囲気ある場所で読ませていただき、恥ずかしいですがぜひご覧いただけたらと思います(#^^#)

また、生誕100年を記念して伊賀市でも『ある開花』の復刻や、岸宏子作品のブックレビューの募集などが行われ、5月末までは伊賀市上野図書館で特設コーナーが設けられています。

生涯を伊賀の地で過ごした岸さんの仕事に触れてみてください。

番組は6月5日(日)午後7時30分から、30分の拡大版でお送りします。
ぜひご覧ください!